Ino_noosの自転車遍路の記録

還暦のオヤジが自転車で四国をお遍路しました。その記録を記します。

本編2023年7月31日(前編)=48-49-50-51-52-53番=

本日の走行距離50.5㎞。本日の費用、札所1,860円、ホテル5,400円、交通費1,840円、食費2,760円、その他1,840円、合計13,700円。

今日は松山市内の札所密集地を一気に攻略し、ついでにディスクブレーキパッドを調達し、松山から今治までは輪行する。松山―今治は約50㎞、松山―今治は日当たりのよさそうな、かつ交通量が多そうな海岸線を3時間以上も走ることになるので、体力的というより健康上のリスクを考慮して輪行に決めた。と、長々と述べたが、早い話が涼しい電車でらくちんワープ、である。

6:40出発。6:55、48番西林寺を打つ。宿からここまではほぼ一直線なので、さすがに迷子にはならなかった。山門。なぜか広角になっているが、気付いていない。

本堂。山門から石畳の参道を一直線に進んだ先にあり、入母屋造り平入本瓦葺きのお堂。屋根には飾り破風をつけず、正面は入母屋屋根の一部を延長して向拝にしている非常にシンプルだが威厳のあるお堂。ご本尊は十一面観音菩薩。向かって右は大師堂。

本堂と大師堂、近くで見るとこんな感じ。二つのお堂は同じ構成で、かつ大師堂を小さめに作っている。ボクは本堂と大師堂のバランスは、このような構成が最も好ましいと感じる。

西林寺の記念印、清浄。心静かにお参りし、本来の清らかな心を取り戻しましょう。出典:四国霊場会。

さあどんどん行こう。7:30、49番浄土寺を打つ。山門。立派な山門で仁王像がはっきり見える。そしてその奥には本堂が見える。

左は本堂。寄棟造り本瓦、向拝の張り出しもなく古い歴史を感じさせるお堂で、国の重要文化財。ご本尊は釈迦如来。右は大師堂。本堂と同じく寄棟造りだが本堂より一回り小さい。先ほどの西林寺もそうだったが、本堂と大師堂を同じ構成にして、かつ本堂は一回り大きくするという構成が、ボクは調和がとれていて最も美しいと感じる。なお、本堂には重要文化財空也上人像が安置されている。見学はできなかったけど。空也上人像と言えば口から吹き出す南無阿弥陀仏の小仏が有名で、ボクは京都の六波羅蜜寺でお目にかかったことがある。

浄土寺の記念印、遍照金剛。遍照金剛には大日如来と一体になられた弘法大師空海という意味もある。出典:四国霊場会。

ここで雲行きが悪い事態になった。と言っても天気の話ではなく、ワゴン車のタクシーに乗った団体遍路ご一行と被ったのだ。彼らは10人程度。浄土寺ではボクが一歩早く参拝を済ませたが、この後の成り行きが心配される。

8:10、50番繁多寺を打つ。繁多寺は小高い丘の上に立つ札所で、やや道に迷った。有体に言うとだいぶ遠回りした。山門。この門ちょっと変わってる。下から見ると屋根がコの字になっている。

山門をくぐると、きれいに整備された大きく広い砂利の参道が開けていて、見通しが良い。その参道の奥に本堂がある。ところで本堂の屋根から謎物体が見えるが、これには驚きの事実があった。

本堂。入母屋造り本瓦、向拝はないが本堂の手前の1間が柱のみの吹き放ちになっていて、古い歴史を感じさせる造り。ご本尊は薬師如来大師堂。宝形造りの典型的なお堂。画像では見にくいが大師堂も手前の1間が柱のみの吹き放ちになっている。

奥本堂と手前大師堂。吹き放ちが良くわかる角度。

大師堂を参拝した後、何気なく本堂の裏手を覗いてびっくり。なんと宝形造りの屋根が元の本堂の入母屋屋根の後ろ半分にめり込むような形でくっついている。これは仰天の構造だ。奈良東大寺の法華堂は寄棟屋根と入母屋屋根がくっ付いた世にも珍しいお堂だが、こちらも負けず劣らずだ。いや奇抜さという点ではこちらのほうが勝っている。俯瞰すると長方形の入母屋造りと正方形の宝形造りがくっ付いているわけで、屋根をくっつけるのはさぞかし苦労しただろう。先ほど本堂の屋根から見えた謎物体は、宝形屋根の頂点に置く飾りだったのだ。何度見てもびっくりする。

と感慨に浸っていたらさっきのワゴンタクシーの団体遍路とまたダブった。今度は先に納経所に行かれ、順番を待つ羽目になった。しばらく待たされて自分の順番が来た時、さっきの本堂について質問した。先に作ったのは入母屋で、その後手狭になったので宝形をくっつけた、とのことだった。法華堂みたいですねと言ったら、ご住職は苦笑しておられた。この本堂中に入ってみたかったなあ。

繁多寺の記念印、大菩提心。もし善男子・善女人・比丘・比丘尼・清信男女等あって、この乗に入って修行せんと欲はん者は先ず四種の心を発すべし。一には信心、二には大悲心、三には勝義心、四には大菩提心なり。出典:四国霊場会。

参拝を終えて山門に戻るとさっきの団体さんが屯している。聞くとワゴンタクシーがどこかに行っちゃってそれを待っているのだという。しばらく彼らと会話した。全部自転車で回るのかとか、宿はどうするのかとか、ボクのサイクルジャージを見てカッコいいとか、道に迷わないのかとか(この質問は的を得ている)、興味は尽きないようだ。聞けばボクと同年代かちょっと若い人たちで、彼らから見ればボクの行動は驚異的なのだろう。話せば決して悪い人たちではないが、団体さんは警戒してしまう。タクシーはまだ来ないのでボクが先に出発する。
境内からの景色。なかなか眺めが良い。

後編へ続く。