Ino_noosの自転車遍路の記録

還暦のオヤジが自転車で四国をお遍路しました。その記録を記します。

本編2023年8月12日=教王護国寺‐帰宅=

走行距離55.1㎞(電車含まず)。本日の費用、札所910円、ホテル0円、交通費25,780円、食費3,431円、その他3,070円、合計33,191円。

今日はいよいよ最終日、奈良から京都まで自転車で移動し、その後自転車を畳み、午後は京都から新幹線に乗る。ラッキーなことに帰りの新幹線の切符が取れたのだ。昨夜のカプセルホテルは快適とは言えないものの予想よりはマシだった。さて、今日最初の目的地は東大寺の転外門。

6:50、興福寺の中金堂。ボクが前回訪れた13年前は何もなかったので、最近再建されたのだろう。時間外なので拝観できなかった。

7:00、東大寺転外門。東大寺を訪れる人は多けれど、転外門まで見る人は少ないと思う。

ボクが見たかったのは、この節だらけの柱。節だらけの木はダメだといわれるが、格子などの細い材料はその通りだが、この柱のように大きく使う分にはむしろ味があってよい。これ面白いと思う。

7:15、旧奈良監獄。決して昔を懐かしんでいるわけではなく、国の重要文化財を見学しているのだ。いつかホテルに生まれ変わるそうだ。ホテルになったら収監されてみたい。

9:50、東寺を打つ。これにて成願。
南大門。よくある三間一戸の八脚門だが、そのスケールがでかすぎる。でかすぎて広角でもはみ出すくらい。奥に見えるのは五重塔

南大門から金堂を見る。

さて、今日は3連休の中日とあって混雑している。境内への入場券売り場が行列になっているので並んでいると、突如脇から「南無大師遍照金剛!」と声をかけてきた爺さんがいる。ぎょっとして振り返ると、「・・・。南無大師遍照金剛って返してほしかった。」と小言を言い始めた。あんたは突然ツーって言ったらカーって返せるのかっ? とは言わなかったが、この手合いはどこにでも一人や二人いる面倒臭いタイプの人だと直感した。

さらにこれから回るのかとか、何回目だとか聞いてくる。いよいよ面倒臭い。あなたは何回目ですかって聞いて欲しそうだったが、もちろん聞かずに無視してやった。そもそも「南無大師遍照金剛」は合言葉じゃないんだから、赤の他人に軽々しくあいさつ代わりに言うべきものではない、とボクは考える。

おっと話がそれた。入場料は前回は13年前だったが確か500円だった。今日見たら850円になっていた。まあ仕方がないか。それでも金剛峯寺より安い。と思っていたら、受付のお嬢さんが菅笠姿のボクを見て「お遍路さんですか?そうでしたら団体割引適用で350円です。」と言うではないか。

さすが東寺!実は四国では盗難防止の意味を込めて菅笠はバックパックと一緒に自転車に残していた。でも今日は遍路をアピールしたくて菅笠をかぶったままだった。これが早速奏功したわけだ。菅笠をかぶっていると五月蠅い爺さんも寄ってくるが女神も微笑んでくれる。

また話がそれた。そんなことよりこの金堂、国宝である。入母屋造り平入本瓦葺き。巨大な裳階を付けている。屋根と裳階の間にあるのは向拝だろうか、大きすぎてよくわからない。内陣は、ご本尊の薬師如来座像とその両脇に日光月光菩薩、ご本尊の台座を12神将が支えるという薬師如来ファミリーオールスターキャスト、これらの仏像群は重要文化財

五重塔。高さ約55mは木造の塔としては日本一の高さ。ところで、この塔は逓減が小さく、つまり1層目と5層目の寸法の差が小さく、寸胴のスタイルとなっている。一方奈良法隆寺五重塔は逓減が大きく、つまり1層目と5層目の寸法の差が大きく、とんがり帽子のようなシルエットになっている。好みがあるだろうが、ボクは法隆寺のスタイルが安定感があって好きだ。左の画像は東寺の五重塔、右の画像は法隆寺五重塔(2009年撮影)。

講堂。重要文化財。入母屋造り平入本瓦葺き。この中には弘法大師の手による立体曼荼羅という仏像群が21体安置されている。しかもその内16体が国宝という、まさに圧巻の世界が繰り広げられている。

この中の五大明王像の一つ降三世明王は、大自在天とその妃烏摩を踏みつけにしている。そして大自在天とはヒンズー教の三大神の一人破壊神シヴァのことである。シヴァを踏みつけて仏教に帰依させる降三世明王、恐るべし。

ところで、この立体曼荼羅、ボクのお気に入り角度は、正面向かって左側の出口から振り返ってみる角度である。一番手前に帝釈天、その奥に不動明王、さらにその奥に大日如来が重なって見えるのだが、実はこの3体、奥に行くにつれ寸法が大きくなっている。従って遠く小さく見あるはずが大きく見えてパースが狂った感覚に襲われる。この感覚含めてこの角度大好き。

国宝御影堂、弘法大師がおられる前堂。屋根は檜皮葺。

同じく後堂。ここに国宝の絶対秘仏不動明王がいる。弘法大師高野山に入定するとき、門まで送ったという伝説が残る秘仏である。見ると禍をなすというが、死ぬ前に一度拝顔したいものだ。不動明王の祭壇。そんなことを考えながら読経していたら、脇の引き戸が突然開いて中からお坊さんが出てきた。一瞬不動明王が出てきたのかと思ってビビった。横峰寺と全く同じこのパターンでまた驚かされた。笑ってしまう。

サイクルジャージに押してもらった東寺の御朱印。もう満足感で胸いっぱい。

京都駅。それにしてもよく切符が取れたものだ。あとでわかったことだが、前日の11日がラッシュのピークだったらしい。さらにこの数日後は台風7号の来襲で東海道新幹線が運休したり大幅に遅れたり、その影響が数日に渡って続いた。ということで帰省ラッシュと台風の間隙を縫って一番いいところを抜けてきたわけだ、結果的に。これもボクの日頃の行いがいいからだ、きっと。そういうことにしておく。

東京駅で若い男性からお遍路さんですか?と声を掛けられた。そういえば菅笠をかぶったままだった。そうです通しで打った帰りです、と答えると、彼も歩きで途中まで回ったそうで、凄いですねと言ってくれた。混雑していたのですぐに別れたが、いやいや君もすごいよ途中とはいえ歩き遍路やったんだから、と彼の後ろ姿に向かって言葉を贈る。

27日ぶりの自宅。8月12日、これにてお遍路完了。

次回から、まとめ、と称して今回の旅を総括する。