Ino_noosの自転車遍路の記録

還暦のオヤジが自転車で四国をお遍路しました。その記録を記します。

本編2023年8月6日(前編)=80-81-82-83-84-85番=

移動距離84.4㎞。本日の費用、札所7,850円、ホテル5,300円、交通費600円、食費3,622円、その他200円、合計17,572円。 

今日は昨日積み残した80番からスタートなのだが、一方今日の最大の山場は81,82番のヒルクライムで、ここは朝一で攻略したい。だからこそ、昨日のうちに80番まで打つ計画だったのだ。

そこで昨夜城山温泉に浸かりながらあれこれ考えて出した結論は、先にヒルクライム、つまり81→82→80→83番という順に打つ、という作戦だった。これは早朝にヒルクライムできる一方走行距離は長くなるので、あとから考えるとあまり良い手ではないと思ったが、まあ当時の精神状態から出た結論なのだろう。しかし、この判断があとで大きな奇跡を生むことになる。

6:00、城山温泉を出発。ちなみに昨日は土砂降りの雨の中、この玄関の軒下で荷ほどきしたり自転車を拭いたりできて、すごく助かった。

県道180号線、鴨川(亭)五色台線の上り。いささか甘く見ていたが特に前半がきつい坂で、手許のサイコンだが勾配が10%前後あった。普通の峠道でこんな急勾配ダメでしょって文句をたれながら上る。ただし後半は緩やかになる。途中の景色。手前におっぱい山、瀬戸内海には瀬戸大橋がかかる。ちなみにおっぱい山と言っているのはボクだけ。

7:10、81番白峰寺を打つ。ここは標高280m。
山門。両側に階段状に小屋根が続くユニークな門。画面では見えないが門の奥にも小屋根がある。早朝なので朝日が射している。

境内、なかなかの階段を上る。

ところで、白峰寺に着く直前歩き遍路に追いついたので挨拶した。すると彼から「ここ(自転車で)上ってきたの~すごいね~」と言うので、「いやいや歩きのほうがよっぽどすごいですよ~」と返した。こういうわずかな会話でも疲れが吹き飛ぶ感じがするのが不思議。その後納経所前で再会しさらに会話したが、通しで歩いているそうで、足がマメだらけになって痛くて歩けないって言ってた。1200㎞歩くのだからね。さもありなん。

本堂。入母屋造り平入本瓦葺き。正面の屋根の一部が延長し向拝になっている。またその手前には屋根付きの参道が繋がっている。こちらは銅板葺き。参道の天井裏にはたくさんの灯篭がぶら下がっていたが、これはピンボケで撮影を失敗した。ご本尊は千手観音菩薩

大師堂。しかしピンボケ。宝形造り本瓦葺き。屋根の一部が延長して向拝になっているのは、本堂と同じスタイル。

改めて、奥が本堂、手前が大師堂。もみじの気が涼しげ。実際は暑いのだけど。紅葉の季節はさぞかし美しいだろう。

勅額門。後小松天皇の勅額のレプリカが掲げられているのだが、見落とした。しかもピンボケ。

頓証寺殿。こちらもピンボケ。なぜか白峰寺はピンボケが多い。白峰寺は、勉強不足で崇徳上皇の御陵を見逃した。また石造十三重塔も見逃した。あ~なんてことだ。日本三大怨霊の一人、崇徳上皇にそっぽを向くようなマネをしてしまった。これはマズいぞ。あとが怖い。

客殿。これもピンボケ。これってもしかして、た、た、り…

白峰寺の記念印、観蓮知自浄。蓮の花は泥水の中からきれいな花を咲かせるように、この世がどんなに混沌としていても一人ひとりの心の内は本来清浄
であるということを蓮の花が咲く様子を通じて知る、出典:四国霊場会。

次の根香寺へは遍路道根香寺道があり、当初は自転車を押してこの遍路道を歩いてみたいと計画していた。が、コンディションが悪いとの注意書きがあり断念した。あとから思うと、ここはやめておいてよかったかもしれない。何しろた、た、り、が怖い。

気を取り直して根香寺に向かう。今朝上ってきた鴨川(亭)五色台線に復帰する。アップダウンしつつ標高450mまでのぼり、下りの途中に根香寺が見えてきた。8:30、82番根香寺を打つ。山門。まだピンボケしてる。

山門をくぐると一旦階段を下りて再び上るという地形。出雲大社を思い出す。階段の両脇の石垣はなんという積み方だろうか適当に積んでいるようで帳尻はあっている。意外と難しそうな石垣。

本堂。宝形造り本瓦葺きのように見えるが、緑青色になっている。両側の回廊は明らかに銅板葺きなので、ひょっとすると本瓦に似せた銅板葺きなのかもしれない。またこの本堂は回廊式になっていて、回廊には無数の小さな観音様が安置されていた。一瞬三十三間堂を想起するが、中に入ってみると異世界の雰囲気がたっぷりの空間だった。ご本尊は千手観音菩薩

回廊の内部。左側のフェンスの向こうが無数の観音様。兵庫県とか大阪府とか札が立っていたので、地域頃に分類されているのだと思う。東北地方はなかった。当たり前か。

大師堂。大変大きなお堂だが、屋根はたぶん入母屋造り。柱も朱塗りだが木造なのかコンクリート製なのかわからない。現場ではそこまで注意してみていなかった。

根香寺の記念印、施無畏。当山本堂の扁額に書かれている言葉です。さまざまな不安や畏れを取り除いてくださる方、施無畏者ともいい、観世音菩薩のことを指します。出典:四国霊場会。

山門の脇にいた牛鬼。背景になじんでいてちょっと不気味。

山のぼりのご褒美。絶景。

山を下りたら、五色台の麓を右回りに迂回し、昨日行けなかった80番を目指す。まだ9時過ぎだが既に炎天下でバテ気味、麦茶を買いにスーパーに寄って一服していたら、そこで奇跡に出会った。

地元のおばあさんが、千円お接待してくれたのだ。おばあさんはボクが自転車にひっかけた菅笠をみて、ボクに声をかけてくれたのだが(本人がそう言ってた)、ボクは千円という金額に驚愕のあまり声も出ない。やっとのことで我に返り、納め札を1枚お渡しして南無大師遍照金剛を3回お唱えするという正式な返礼をした。

このおばあさんも昔お遍路をしたそうだ。今ボクがいる場所は、普通の順打ちではルートにならない場所なので、お遍路は珍しかったのではないかと推測する。

それにしても昨日80番を打っていたら、そして今日先に80番を打っていたら、さらにこのスーパーに立ち寄らなかったらあり得なかった出会いで、これは奇跡だと感じた。理系で理屈っぽいボクがそう思うのだから間違いない。

後編へ続く。