Ino_noosの自転車遍路の記録

還暦のオヤジが自転車で四国をお遍路しました。その記録を記します。

本編2023年8月4日(前編)=番外椿堂‐66-67-70-68-69番=

走行距離76.0㎞。本日の費用、札所1,750円、ホテル5,500円、交通費0円、食費1,884円、その他110円、合計9,478円

今日はお遍路中最も標高の高い札所に参拝する。その名も雲辺寺、標高は900m。雲辺寺へは北側からロープウエイで登れるので、多くの客はそれで登るのだろう。しかし南側からは登山道もある。せっかく最高峰の札所に上るのにロープウエイはないだろうという貧乏根性丸出しのボクは、南側から自転車で上ることにした。

6:10出発。目的地は雲辺寺だが、その前に番外霊場椿堂に寄る。R192は地味にきつい坂道で、手許のサイコンだが勾配4~7%の坂道が延々と続く。昨日のダメージから回復していないのか、早くもバテバテになってきたところで、6:50、椿堂を打つ。椿堂はR192沿いにあり特に迷わなかった。
山門。門に鐘がぶら下がっている。

左側は本堂。宝形造り銅板葺き、屋根の一部が伸びて向拝になっている。ご本尊は地蔵菩薩。ちなみに右側の真っ赤な人は不動明王

大師堂。

こちらの境内にある椿の葉を持ち帰ると病気が治るとの話を聞いたのだが、ボクは写真に撮って持ち帰ることにする。

7:20再スタート。再び地味な坂道をダラダラと上る。やがて強敵の境目トンネルが見えてきた。境目トンネルは全長855m、歩道も狭く使い物にならないので決死の覚悟で車道の左端を突っ走る、と考えていたのだがR192は今朝からほとんど交通量がない。

結局境目トンネル通過中はトラックはおろか1台の車にも追い越されることはなかった。早朝だったからか、あるいは並行して高速ができたからか、あまりの交通量の少なさに安堵しつつ、バックミラーを確認の上道の真ん中を走行した。言うまでもないが左端って障害物や小石が多くて危険なのだ。

境目トンネル通過後は一旦下る。そして、あの有名な民宿岡田の前を通過し、突き当りを左に折れ、県道8号を北上する。しかしこの8号、なかなかの急勾配で勾配10%を越える箇所もある。曼荼トンネルまで約3㎞は明らかに先ほどまでのR192とは異なる雰囲気だ。ここはあまり警戒していなかったので、結構きつかった。

雲辺寺の参道に入る前に早くもバテバテ状態で、どうにかこうにか曼荼トンネルまで到着。ここで一服し、ビジネスホテルマイルドさんからお接待していただいたおにぎりをいただくことにする。

曼荼トンネルを北側から。

ついに香川県に突入。

ビジネスホテルマイルドさんからお接待していただいたおにぎり。

この道路が有料道路だった時代の料金所跡と思われる。
おにぎりエネルギーを補給後8:50スタート。

曼荼トンネルを抜けて右折すると、そこは曼陀峠、雲辺寺の参道に繋がる山道である。右折すると一旦下り坂になるが、龍水の滝というポイントから上りに転じる。上りに転じた後も勾配5%前後の緩い上りが続く。たまに出てくるヘヤピンもこの程度。

しかし、後半は10%を越す急坂が連続する予想以上の激坂が待っていた。しかも距離があるので手に負えない。
左の画像、前半の比較的緩い坂。中央の画像、勾配10%超しかも直線の上りしかもコンクリート舗装。右の画像、後半の10%勾配。標高650mくらいまで上ると一旦下り坂になる。その後10%超の急勾配、また下り、その後10%、と精神的なダメージが蓄積する過酷な上りが続く。

苦心惨憺で雲辺寺まであと0.8㎞まで上ってきたが、さらに最後の試練が待っていた。

最早おなじみと言っていい急勾配のヘヤピンカーブ。ただここは標高860mで雲辺寺まで目と鼻の先。あと一歩というところでこの仕打ちはきつい。

10:20、66番雲辺寺を打つ。麓の旧料金所から1時間30分もかかった。この区間約9㎞、それにしても時間がかかりすぎた。やはり疲労が蓄積していること、今日は8㎏の荷物を積んでいること、このルートいささか甘く見ていたこと、が重なり気合が入らずダラダラと上ったためだろう。疲労困憊だが何とか漕ぎ切った。

ところでこの1時間30分の間、車はおろか人一人もいなかった。途中林業の人が作業する音は聞こえたが、人の気配はそれだけ。これも滅多に得られない経験だろう。それにしてもここは涼しい。気温は26℃。さすがに1000m近いと下界とは6℃は違うと思う。

仁王門。奥の階段の上には大師堂がある。

本堂。入母屋造り平入銅板葺きのコンクリート製。銅板の色が黒いので、さほど古い建物ではないようだ。屋根には千鳥破風、正面軒下の壁から唐破風が張り出すスタイル。屋根と唐破風は完全に分離している。ご本尊は千手観音菩薩

大師堂。入母屋造り平入、飾り破風はなく、正面屋根の一部が延長し向拝となっている。

向拝の軒下。向拝虹梁には鶴の彫刻、木鼻には像。シンプルなところがいい。

雲辺寺が最高峰であることを示す看板

雲辺寺香川県最初の札所という位置づけだが、実は徳島県だったりする。

雲辺寺の記念印、三心平等。若し自心を知るは即ち仏心を知るなり、仏心を知るは即ち衆生の心を知るなり、三心平等なりと知るは即ち大覚と名づく、大覚を得んと欲はば、まさに諸仏自証の教えを学すべし。出典:四国霊場会。

参拝後ロープウエイの山頂駅に行ってみたら、思いがげず絶景が広がっていた。これは山頂駅奥の毘沙門天像の台座展望台からの眺め。眼下に観音寺市が一望できる。その先には瀬戸内海、さらにその先には見えるのは岡山県か。ボクは若いころパラグライダーをやっていたのだが、こんな素晴らしいロケーションを楽しみながらフライト出来たらと、久しぶりに飛びたいって思った。いつまでも見飽きない景色だった。

こちらは同じく台座展望台から昨日泊まった伊予三島方面。積雲から雨が降っているようにも見える。こんなに近い雲が目の高さだ。手前に天空のブランコが見える。リフトがあるがここは冬季はスキー場になるそうだ。こんな絶景を見下ろしながらスキーしてみたいものだ。

五百羅漢。正直センスが悪いというか気持ち悪い。

雲辺寺は一口で言うと石寺。石像が至る所にあり、石でできたオブジェや、本堂もコンクリート製。正直石像にはあまり興味がないので、雲辺寺自体はさほど関心がなかった。しかし毘沙門天からの眺望は最高の一言。疲労を押してロープウエイ駅まで行ってみて本当に良かった。これ見逃したら一生の損だった。

後編へ続く。